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『指1本』で車を持ち上げよう!②(震災時の人命救助のために)

  • 『指1本』で車を持ち上げよう!②(震災時の人命救助のために)

材料

4m角パイプ 9×9×30cm角材 普通乗用車 

内容

・『指1本』の力で,車を持ち上げる。
・4m角パイプを車の後輪にかませて,てこの原理で車を持ち上げる。
・棒の長さと棒の重さ,支点がしっかりしていることが,てこを有効に使う要素だとわかる。

詳細

阪神淡路大震災では,6434人もの尊い命が失われました。その約83.3%が家屋や家具の倒壊による圧死だったというデータがあります。 (平成22年度国土交通白書)。 しかし,その数倍の方々が,瓦礫の下から救い出されたそうです。震災直後に、家族や近隣住民が協力して、倒壊した家屋から救出したり、ケガの手当をしたりすることで、命を救うことができたのです。 このように、震災直後の救出は、自分たちの手(自助・共助)で行わなければならないのです。なぜなら、救急隊や自衛隊(公助)の到着を待っていては,とても時間がかかるため,間に合わないからです。 その時に活用されたのが,長くて丈夫な柱や車のジャッキなどだそうです。しかし,それらを有効に使える知識や体験がなければ,無用の長物です。 倒壊した家屋等の下敷きになった場合,14分以内に助け出さなければ,命が助からないといいます。その僅かな時間の間に,『てこの原理』を『人命救助』に活用できるだけの知識と経験があった当時(1995年)の大人たちが,多くの命を救出したのです。 しかし,現在では,『てこ』を小学6年生で道具の利便性として学ぶだけですし,中・高では,ほぼ扱いがありません。だからこそ,近い将来必ず起こる大震災の際に『命』を救う術を,知識と体験で,6年生の児童に会得して欲しいと強く願いながら授業をしてきました。 まず,バールで釘抜き体験をします。次に,バールにイレクターパイプをかませば,大きな釘を軽々と抜けるという体験をさせます。このようにして,支点と力点,支点と作用点の距離がどうあるべきかを学びます。 最後は,名づけて『指1本ジャッキアップてこ』体験です。丈夫で曲がりにくい4mの角パイプを使います。元は6mですが4mにカットして,貸し出し軽トラで運んできました。丸パイプはしなるだけなので,持ち上げられたという実感はつかめません。9cm角で長さ30㎝程の角材を,支点として準備しました。 持ち上げる車は,普通乗用車です。重い車だと『指1本』ではムリだと思います。片手ではなく『指1本』にインパクトがあるので,予備実験が必要です。 エンジンがある前輪は重いので,後輪の方を持ち上げます。これも重要なポイントです。 パイプに対して車が直角になっていることを確認し,車を動かします。車輪の中心に角パイプが来るようにしてブレーキをかけます。はみ出しは3cmほどにします。これも重要なポイントです。 まず,支点(角材)から作用点(タイヤ)までの距離1mぐらいでチャレンジ。『指1本』を感動的に体感するために欠かせない体験です。全体重をかけても,動きはほとんど見られません。 次に,パイプの端を持ち上げ,支点になる角材を,できるだけ作用点(タイヤ)に近づくよう,足でけり込みます。手を使うと危険です。支点から作用点までの距離を15㎝ぐらいにします。これ以上近づけると手応えが軽くなりすぎて,かえって感動がありません。 児童に気づかれないようにして,パイプの端を少し下に押さえて軽く動くことを確認しておきます。 最初の児童だけ,パイプの端を片手で押し下げさせてから,指1本でも体験させます。すると,軽々とタイヤ(車)がジャッキアップされます。あまりの手応えの違いに,児童はびっくりしたり唖然としたりします。このようにして,てこを有効に活用するためのポイントを,感動的に体感してくれることを願っています。 理科室に戻ってから,プレゼンで振り返りをします。この体験には,あと2つのポイントがあります。 1つ目は,約12kgもある角パイプの自重です。この重さのお陰で,指で押さえる以前に,てこは支点の左右でほとんど釣り合っていたのです。 指1本で押さえる力を0.4kgだとすると,車(タイヤ)を158kgもの力で持ち上げることになります。では,児童の全体重(約40kg)をかけたら,どんな大きな力を生み出せるのでしょうか。何と1t以上の力を発揮することになるようです。 2つ目のポイントは,支点に大きな荷重が掛かることです。つまり,下の地面が荷重に耐えられるしっかりしたものでないと,てこの力を十分に発揮することができません。それを『支点はガマンしてんねん!』というキャッチコピーで刷り込むことにしています。 最後に,「危険なので,高校生以上になるまでは,あなた達は現場に近づいてはいけません! 救出は大人に任せて,てこを有効に使ってもらえるようアドバイスしてください。あなた達が『頼みの綱』になるかもしれません。期待してますよ!」と伝えて,授業を終えるようにしています。 震災救助:Earthquake rescue てこの原理:Lever principle 人命救助:Life-saving techniques 防災教育:Disaster preparedness 震災時の対応:Emergency rescue methods 指1本で車を持ち上げる:Lifting a car with one finger 災害対応訓練:Disaster response training 地震安全教育:Earthquake safety education

基本情報

分野 分野2 育てたいもの 管理番号 季節 場所 難易度 危険度
物理 探究心 980 春夏秋冬
春夏秋冬
広場;
広場
難しい
少し危険
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