ツマグロヒョウモンの幼虫 パンジーやビオラ
・ツマグロヒョウモンの幼虫を飼育して,生態を観察する。
・幼虫,蛹,成虫を同時観察できるようにセットする。
・知られざる様々な生態を観察・確認することができる。
5年生のSさんが「プランターに毛虫が20匹以上います〜」と教えてくれました。パンジーなどの寄せ植えで,ツマグロヒョウモンの幼虫を30頭以上ゲット! いろんな観察ができそうです。 ツマグロヒョウモンのメスは,ビオラやパンジーなどに卵を産みつけます。 卵から孵化した幼虫は,ビオラの葉や花まで食べて,人知れず大きく育ちます。でも,ほぼ終齢幼虫になって見つかった個体は,害虫駆除される運命です。 ガーデニングの大敵なのですが,意外性がてんこ盛りの生物教材なので,理科室前で展示することにしました。下で幼虫,真ん中で成虫(最初は写真のみ),上で蛹を観察できるようにセットしました。 大量の生物材料のおかげで確認できた,ツマグロヒョウモンの知られざる?「そ〜なんだ」を10連発で紹介していきます。 その1:幼虫編①見た目が赤&黒で,どう見ても毒毛虫です。しかし,無数のトゲには毒はなくゴムのような触感で,触っても痛みを感じることはまずありません。触って確かめた子は,皆んなに自慢したくなります。 その2:幼虫編②蛹になる前(前蛹の時)に,幼虫は腹部先端の1点だけで逆さになってぶら下がります。「垂蛹型」と言ってオオムラサキなどと同じタイプです。2本の糸で体を支える「帯蛹型」のアゲハなどとは違った姿です。蛹化直前になると,体色が赤っぽく変化します。 その3:幼虫編③頭部の皮が破れて蛹化が始まります。赤っぽい蛹が姿を現します。脱皮殻は,脱ぎ下ろすのではなく,体の蠕動運動で器用に脱ぎ上げていきます。 その4:蛹編①上まで脱ぎ上げた脱皮殻は,どうやって脱ぎ捨てるのでしょうか。ここで必見のマジカル・テクニックが見られます。幼虫時の腹部先端でぶら下がったまま,蛹は尾部先端を引き抜きます。そして,吐き溜めた糸座に尾部先端が引っ掛かるまで,執拗に擦り付けます。確実に引っ掛かったら,尾部を激しく動かして,脱皮殻を振り落とします。「あんたが落ちんのか?」と心配になるほどの勢いです。これで蛹化完了です。 その5:蛹編④蛹の尾部先端の想像だにしない構造は,見た人誰もがびっくり仰天! 双眼実体顕微鏡で観察させると,子どもたちからどよめきが起こります。そこだけ異世界のように,無数のフックが生えているのです。これも必見ポイントです。その鉤爪を糸座に絡み付けることで,体を保持するのです。 マジカルテクニックをもう一度。蛹が尾部先端を引き抜きました。それを「うんとこしょ」と糸座まで持ち上げます。何度も強く擦り付けて,フックを糸座に確実に絡ませます。あとは,体を大きくくねらせて,脱皮殻を振り落とします。 その6:蛹編②蛹化したての蛹は赤っぽい色をしています。だから,蛹化直前の幼虫が赤っぽく見えたのですね。しばらくすると,蛹は茶色っぽくなります。 その7:蛹編③蛹にもトゲが生えていて,頭部から5対は金ピカです。子どもの目も輝きます。 その8:蛹編⑤羽化直前になると,蛹の色が濃くなります。トゲが金色から青っぽい金属光沢に輝きます。殻を透してチョウの翅の模様などが見えるようになり,その日のうちに羽化します。 その9:成虫編:①口吻は,他のチョウと同じように,蛹の中で触角の脇に1対に納められています。羽化が始まりました。 前脚が見えていますが,これから先は折りたたんで使うことがありません。子どもが「足が4本しかない!」と困惑します。 まだ口吻は直線的ですが,殻から抜けると,すぐに丸まります。そして,巻いたり伸ばしたりしながら1つに合わさっていきます。これも必見の観察ポイントです。 ちぢれた翅に体液を送り込んで,どんどん伸展させていきます。 ただ,残念なことに,金ピカに輝いていたトゲが,羽化後には透明になってしまうので『ウソ金』呼ばわりされます。これは,構造色だと言われています。 金トゲはメス,銀はオスという報告がありますが,今回は確認していません。 その10:成虫編②翅が伸展し,一通り羽化が完了したら,幼虫時代の?不要なものを排泄します。アゲハではその色が薄い黄褐色なのですが,ツマグロヒョウモンの場合,なな何と見てびっくりの『血の色』なのです。子どもは,ケガをしたのじゃないかとマジでビビります。昆虫の場合,体液の色は綺麗なエメラルドグリーンなのですが。 しばらく幼虫・蛹・成虫を同時観察させたいと思いました。成虫に薄い砂糖水を与えると,何頭かは,気づいて吸蜜しました。 驚いたことに,羽化直後のケース内で交尾が見られました。これは,子孫を残すための究極の選択なのでしょうか。 大量に飼育したので,多くの観察成果が得られました。成虫はしばらくして放ちましたが,ビオラやパンジーはもうありません。自然のスミレなどで次世代が育ち,そのまま成虫越冬するのでしょうか。 Argyreus hyperbius lifecycle Butterfly metamorphosis Caterpillar to chrysalis Structural coloration in insects Pansy pests Viola pests Caterpillar to butterfly
生物 | 動物 生態 | 探究心 | 973 | 夏
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