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BTB溶液が,黄・緑・青ではなく,赤に紫に色変化!?

  • BTB溶液が,黄・緑・青ではなく,赤に紫に色変化!?

材料

リトマス紙 BTB溶液 食塩水 炭酸水 塩酸 重曹水 アンモニア水 試験管 試験管立て 

内容

・塩酸の液性をBTB溶液で調べる。
・希塩酸にBTB溶液を滴下して,呈色を調べる。
・希塩酸の濃度が高いと,水溶液が黄変ではなく赤変することがあることが分かる。

詳細

小学校理科では,リトマス紙で水溶液の液性を判定します。ただ,リトマス紙はアバウトな指示薬なので,現場では困惑することがあります。 私は,食塩水,炭酸水,希(薄い)塩酸,重曹水,希(薄い)アンモニア水に加えて,水道水の液性も調べさせています。 水道水は中性だと思い込んでいる人が多いのではないでしょうか。しかし,実際は中性ではなく,アルカリ性を示す場合があります。理由は,安全に飲めるよう「次亜塩素酸ナトリウム」を消毒剤として加えているからです。塩素臭(カルキ臭)がするのはそのためです。それに液性が酸性だと,水道管が鉄管の場合,溶け出す恐れがありますね。 食塩水には,中性を示して欲しいです。でも,弱アルカリ性の水道水に食塩を溶かした食塩水は,当然のことながら中性にはなりません。そこで私は,ソフトコンタクトレンズ用食塩水を使っています。これなら,期待通りの中性を示してくれます。 食塩水は中性,希塩酸は酸性,重曹水はアルカリ性を示しましたが,水道水は微妙です。 希アンモニア水は,水道水の後でチェックします。すぐに,リトマス紙に液をつけません。その前に,紙から5mmほど横に離してキープ。それだけで,赤色リトマス紙が青く変色します。児童は,この空中変色に驚きます。同時に,アンモニアのきつい臭いは,アンモニアの分子が飛んでくるからだと納得してくれました。 問題なのは炭酸水です。リトマス紙では,結果が3つに分かれてしまいました。二酸化炭素が大量に溶けているので酸性のはずですが,場合によっては,アルカリ性派が優勢になって困ることがあるのではないでしょうか。 これは,リトマス紙の変色域が比較的広い(PH4.5〜8.3)ためです。この範囲では(弱)酸性・中性・(弱)アルカリ性のいずれにもなり得るのです。 そこで,炭酸水のリトマス紙による液性判定だけはお預けにして,変色域が比較的狭い(6.0〜7.6) BTB溶液で調べることにしました。 炭酸水にBTB溶液を滴下すると黄色に変色したので,全員が酸性という判定に納得することができました。 他の水溶液もBTB溶液で調べました。食塩水は中性の緑色。重曹水と希アンモニア水はアルカリ性の青色になりました。水道水は青みがかった緑色になったので,弱アルカリ性であると説明しました。 ところが希塩酸を調べてみると,新たな問題が発生しました。希塩酸は酸性なので黄色に変色するはずですが,赤っぽいオレンジ色に変色したのです。この変化は,中学校理科の先生方もご存知ないかもしれません。 なぜなら,中学校で酸・塩基判定をする場合,薄い濃度(約0.5mol/L) の希塩酸を使います。小学校では,金属(アルミニウムと鉄)を溶かす実験をします。そのため,比較的高い濃度(約3mol/L)の希塩酸を使います。それを薄めないまま酸・塩基判定に使ったため,赤っぽく変色したのです。 それを知っていれば慌てることはありません。水道水で2倍ぐらいに薄めさせます。すると,酸性を示す黄色になってめでたしめでたし。 試しに,約12mol/Lの濃塩酸にBTB溶液を滴下してみました。すると,赤紫色になることがわかりました。 おまけで,アルカリ性の水酸化ナトリウム水溶液の濃度を濃くして,BTB溶液を滴下してみました。 まず,約3mol/Lの希水酸化ナトリウム水溶液の呈色は青色でした。しかし,約6mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液は,青色ではなく紫色に変色しました。 これも濃度が濃すぎるためなので,この水溶液を水道水で2倍ぐらいに薄めてみると,青色になりました。 一般的なBTB溶液の呈色変化は,黄・緑・青です。しかし,水溶液の濃度が濃いと,塩酸の場合は赤っぽく,水酸化ナトリウムの場合は紫色っぽくなる場合があるということです。それを知っていれば,児童の困惑をすっきり解消してあげられますし,先生の株が上がるのではないでしょうか。 それ以前の問題ですが,BTB溶液を使おうとして,緑色のはずが,青色になっていたことがなかったでしょうか。中性状態が緑色でなければ,正しい酸塩基判定ができません。 そこで,ご存知の方は,BTB溶液にストローで息を吹き込みます。呼気の中の二酸化炭素を溶け込ませて,酸性側に寄せていくのです。様子を見ていて,溶液の色が青色から緑色になったら,調整完了です。 酸・塩基指示薬はいくつかあり,呈色変化を覚えるのは大変です。そこで,リトマス紙の色変化は,『リトマス紙,リトマス紙,赤赤 酸性,青青 アルカリ,変化なしなら中性です!』というキャッチコピーで覚えさせています。最低でも『赤赤 酸性』と覚えておけばOK,と思うのですが,全員正解になった試しがないのが実情です。 ちなみにBTB溶液のキャコピは,『BTB,BTB,酸・中・アルカリ,黄・緑・青!』です。卒業生によると「中学校でも役に立っている!」ということでした。

基本情報

分野 分野2 育てたいもの 管理番号 季節 場所 難易度 危険度
化学 酸アルカリ 探究心 954 春夏秋冬
春夏秋冬
室内;
室内
普通
少し危険
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