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皆既月食とターコイズフリンジ

  • 皆既月食とターコイズフリンジ

材料

双眼鏡 天体望遠鏡(赤道儀) デジカメ ビデオカメラ 三脚

内容

・ターコイズフリンジを観察する。
・皆既月食を,倍率の高い双眼鏡か天体望遠鏡で観察したり,カメラの高倍率アップで撮影する。
・皆既月食の時に,赤くなった月だけでなく,青緑色のベルトも見ることができる。

詳細

私がターコイズフリンジの存在を知ったのは,前(2018/01/31)の皆既月食の直前でした。 皆既月食の際に月が赤っぽく見えるようになるのは,月が地球の影に入るからです。 そもそも『皆既月食』は,月から見ると『地球による日食』になります。太陽・地球・月が一直線に並ぶので,地球から見た月は満月です。 その月面からは,地球が明るく輝く太陽を,少しずつ隠していく様子が見えるはずです。 月による皆既日食を地球から見ると,金環になったり,はみ出したコロナやダイヤモンドリングが見えたりします。とても美しい神秘的な光景です。 対して『地球による金環日食(皆既月食)』を月面から見ると,真っ黒な地球の影の周りに,赤と青の輪が美しく輝いて見えるそうです。 太陽光が大気を通過する際に青系の光が散乱(レイリー散乱)され,散乱しにくい赤系の色だけが通過します。これは,夕日や朝日が赤っぽく見えるのと同じです。その周りには,はみ出した白い太陽光が見えます。 また,太陽光がオゾン層を通過する際,赤系の色がオゾン層に吸収されるそうです。その結果,青系の色だけが通過することになります。 さらに,青っぽい光はあまり屈折しませんが,赤っぽい光は地球の大気によって内側に屈折します。暗い本影の中に弱くて赤っぽい光が投影されるので,月面が赤黒く見えます。 そのため地球の影は,円状で赤っぽい影とリング状の青っぽい影になります。月が徐々にその影の中に入っていくことで,形や色の変化が起こります。 月面に投影される赤や青い影はあまり明るくないので,本影が月面にかかるまでは目立ちません。本影に入って月面の反射光が弱まると,月が一気に赤っぽくなります。 さらに食が進むと,青っぽい光も見えるようになります。その際に見える色がターコイズ(青緑)色で,赤い影の縁飾り(フリンジ)のように見えるので,ターコイズフリンジと呼ばれています。 ターコイズフリンジは,前回も今回も,皆既前よりも皆既明けの方が鮮やかに見えました。なぜ?どうして?WHY? 今回(2022/11/8)の皆既月食は,とても条件がよく,赤銅色の月も青いターコイズフリンジも,とても綺麗に見えました。ターコイズフリンジを肉眼で確認することはできませんでしたが,倍率の高い双眼鏡や望遠鏡では,くっきり鮮やかに輝いて見えました。 仕組みを知ったうえで観察・撮影できたので,よりロマンチックに皆既月食を楽しむことができたと思います。 事前に,多くの児童に皆既月食の仕組みやターコイズフリンジの存在を紹介していました。あとで聞くと,約98%の児童が皆既月食を楽しんだようです。 観察環境の関係で,ターコイズフリンジを見ることができた児童はわずかでしたが,「きれかった!」と笑顔で教えてくれました。 今回は,442年ぶりの月による天王星食も同時観察できました。ただ,手持ちの望遠鏡でアップしても,水色っぽい点にしか見えなかったので,有り難みを感じることはできませんでした。 次回の皆既月食は2025/09/08です。今回のように絶好の観察日和になって,より多くの児童が神秘的な赤い月と青いターコイズフリンジを観察し,宇宙のロマンを感じてくれることを願っています。

基本情報

分野 分野2 育てたいもの 管理番号 季節 場所 難易度 危険度
地学 天文 探究心 952 春夏秋冬
春夏秋冬
野原;広場;
野原広場
難しい
少し危険
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