原体験コラム一覧
科学実験データ一覧

「雲海」に包まれているのに,「竹田城跡」が下から丸見え!?

  • 「雲海」に包まれているのに,「竹田城跡」が下から丸見え!?

材料

カメラ 三脚 

内容

・雲海の上からと下からの竹田城跡の見え方の違いを探る。
・立雲峡展望台(上)と古城山ふもと(下)からの見え方を比べる。
・雲海の下から見上げると,雲があるはずなのに晴れていることが分かる。

詳細

月齢16の月が残る11月21日午前5時過ぎ,雲海に浮かぶ竹田城跡(古城山山頂に築かれた山城跡)を見るために,兵庫県朝来市の立雲峡へ出かけました。 ガイドをお願いした地元の國眼さんと一緒に,駐車場から15分ほど登った第2展望台あたりに陣取りました。 辺りを見渡すと,かなり濃い雲海(霧雲)に覆われていて,遠くの高い山頂しか見えません。 でも,私たちの周りに霧が立ち込めているわけではありません。上の方も下の方も,はっきりと見渡せます。私たちは雲海の中にいるのではなく,雲海を見下ろしているんです。 下にあるはずの国道や円山川,竹田の町並みは,雲海に隠されてまったく見えません。 國眼さんによると,今朝は,これまでで最高の雲海が望めそうです。 しばらく雲海が下がってくるのを待っていると,ついに雲海が明けて,待望の竹田城の天守台や二の丸跡がお目見えです。 お隣におられた五十嵐さんも初めての体験だそうで,こんな素晴らしい雲海に巡り会えるとは,なんてラッキーな朝なんでしょう。 下から見上げると,雲海がどのように見えるのかを確かめるために,急いで下山しました。 途中の道が雲海に埋もれているかと思いきや,ほとんど霧も見えないまま下まで降りてきました。 町中にも霧が立ち込めているわけではありません。雲海は,かなり上の方にあるようです。 橋の近くから東の方にある立雲峡を見上げました。雲海が上から蓋をしたように,五十嵐さんがおられる第2展望台どころか,山影さえまったく見えません。 そこから西の方に目を向けて歩いていくと,途中から青空が見え出しました。 古城山の麓から見上げると,薄い雲の向こうに,青空と竹田城跡が見えました。明らかに晴れているのです。 しばらくすると,竹田城跡が朝日を浴びて,美しく輝いて見えるようになりました。そこで,第2展望台の五十嵐さんに電話をかけて,状況を教えてもらいました。 朝日に照らされて,雲海に囲まれた城跡全体が輝いて見える,まさに絶景! 山々の紅葉と相まって,とても美しい光景だそうです。 でも,私たちがいる下の町並みは相変わらず,雲海に隠されて見えないそうです。 こちらからも立雲峡は見えないのですが,見上げた城跡の石垣は,先ほどにもまして青空の中にくっきりと浮かび上がっています。麓から石垣まで,綺麗な紅葉もはっきり見えます。雲海などまったく見えません。どういうことなんでしょう。 理由について考えてみました。 雲海が分厚い場合は,第2展望台が埋もれてしまうそうです。どうやら,今朝の雲海(霧雲)の厚みは,かなり薄いようです。 気象予報士の二宮直樹さんが,相対湿度のデータをグラフ化してくださいました。相対湿度は地上で95%以上ありますが,高度250mでは80%程度です。つまり凝結度が低い,雲海の密度が低い,ということは雲海の厚みが薄いと言えるようです。 2つめに,薄い雲海(霧雲)の厚さについてです。竹田城のある古城山は標高約350mです。つまり,雲の厚みは比較的薄いので,晴れ間が見えたのではないでしょうか。それに対して,立雲峡との直線距離は約2200mもあります。つまり,雲の厚みが比較的厚いので,見通すことができなかったのではないかと思われます。 3つめは,視界の明るさの違いです。比較的暗い方から明るい方を見る方が,その反対よりも物が見えやすくなります。雲海の上は比較的明るく,雲海の下は比較的暗いでしょう。つまり展望台からは雲海の下の町並みなどは見えにくい,それに対して雲海の下からは,城跡が見えやすかったのではないかと思われます。 今回は観光ではなく,取材で初めて立雲峡を訪れました。この日も数百人が2時3時から詰めかけておられました。それでも雲海が見られない場合があるそうです。それを思うと,お初さんで雲海の様子が撮れたのはとてもラッキーだったと,ありがたく思っています。

基本情報

分野 分野2 育てたいもの 管理番号 季節 場所 難易度 危険度
地学 大気と水 探究心 935 秋冬
秋冬
山;
山
難しい
普通
前のページへ戻る