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月のうさぎ模様の傾きの見え方は,南中前後でコロッと変わる!?

  • 月のうさぎ模様の傾きの見え方は,南中前後でコロッと変わる!?

材料

双眼鏡 ビデオカメラ デジカメ 三脚

内容

・満月を一晩かけて観察する。
・三脚を水平に固定して2時間おきに動画や画像を撮り,後で並べて比べる。
・月の「ウサギ模様」の傾きが,南中前後に大きく変わるように感じることが分かる。

詳細

No.869で紹介したように,月の模様の見え方は,国によって違います。それは,主に緯度の違いによるものだと思われます。月を見上げて見るとしたら,その時間帯は,一般的に午後6時頃から9時頃までではないでしょうか。観察地点の緯度が違えば,見える模様の傾きも違うでしょう。そのため,目に映った模様を何に喩えるかが違ってくるのだと考えられます。 日本では上記の時間帯に月を見て,「ウサギ」や「ウサギの餅つき」を連想する人が多いそうです。その「ウサギ模様」ですが,月が動くにつれて,その傾きの見え方はどうなっていくのでしょう。「ウサギ」に見えた模様の傾きは,一晩中同じなのでしょうか。日没後,東に見えるときから,南に見える真夜中,西に沈もうとする明け方まで,「ウサギ模様」は,常に耳を上にした状態で見えているのでしょうか。それとも,変わっていくのでしょうか。 そんなの意識して見たことがないから分からない! という人が多いことでしょうか。そこで,一晩かけて,「ウサギ模様」の傾きが変わるのか変わらないのかを調べてみました。 調べたのは晴れた満月の翌日,月齢16.5の十六夜(いざよい)の月です。18時,20時,22時,0時,1時,2時,4時,6時,8時に,月の写真を撮って比べるのです。 さて「ウサギ模様」の傾きの見え方は変わらないのか。答えはノーでした。日没後,耳を上にして見える「ウサギ模様」は,真夜中過ぎには,腹を下にした横倒し状態に見えます。そして,西に沈む頃には,耳を下に向けた逆さ状態に見えます。つまり月の模様は,一晩のうちにおよそ180°回転していることが分かりました。 ただ,模様の傾きは,徐々に変化していくと思い込んでたのですが,そうではありませんでした。 午後6時,8時,10時の傾きはほとんど変わりません。写真を見る限り,12時なって少し右に傾き,南中になる午前1時と2時の間に,ゴロっと大きく右に傾きました。その後4時に少し傾き,6時,8時の傾きはほぼ同じでした。撮影状況に問題はないと思われるので,何か別の理由があると思われます。 そのままグルリと1周して,翌日の日没の頃には,また同じ傾きの模様(耳が上)の月として,昇ってくることになります。 月は1日に約12°公転するので,1日経つと位置は,少し東にずれていきます。その間,月の模様は,耳を上にしたままズズズッと平行移動しているのかと思いきや,1日に360°回転しているように見えるということです。その理由は,以下の通りです。 地球に乗っかっている私達は,夜の間に半回転しています。月の出と月の入りの頃の人間を宇宙から見ると,ちょうど逆立ちしたかのような位置に移動しています。仮に,月が天頂付近を通るラインで動くように見えるとして考えてみましょう。そうした方が,理解しやすいからです。 月の出から南中前までは,東向きのほぼ同じ立ち位置で月を見上げるでしょう。この間は,ウサギの耳が上に,臼が下に見えます。しかし,南中時刻前には天頂付近の高い高度にあって,そのままだと見づらくなります。そこで,立ち位置を南方向に変えることになります。すると「ウサギ模様」は横倒しに見えます。どうでしょう。イメージできましたか? そこを過ぎるとまた見づらくなるので,西方向に立ち位置を変えます。そうすると今度は,ウサギの耳が下で臼が上に見えるようになり,そのまま沈んでいきます。 つまり,月の「ウサギ模様」の傾き自体は変わっていません。『東から耳を上にした状態で昇ってきて,そのまま直進して西に沈むだけ』なのです。 私たちが月を見上げやすい方向に立ち位置を変えるため,南中前後の2時間ほどの間に,模様の傾きが大きく変わったかのように感じるのです。 以上は,月が天頂付近を通ると仮定しての説明です。実際は天頂より南寄りを動いていくように見えるので,この関係性がなかなか理解しにくいのだと思われます。その場合はリクライニングできる椅子に座り,天を仰ぐようにして見ると良いと教わりました。

基本情報

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春夏秋冬
広場;
広場
難しい
少し危険
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