原体験コラム一覧
科学実験データ一覧

ため池の泥の上に残された,謎の足跡の主を探れ!

  • ため池の泥の上に残された,謎の足跡の主を探れ!

材料

ビデオカメラ 三脚

内容

・謎の足跡の主を探る。
・水抜きをした池に出向いて,足跡がつけられる現場を押さえる。
・足跡ができる条件と,その主がカメであることが分かる。

詳細

近所のため池を訪れました。普段は,満々と水を湛えていますが,10月下旬から水を抜き始めます。農業用のため池の水を抜いて天日干しすることで,水質が改善されるそうです。 岸辺で,子ガメを見つけました。この池でも,アカミミガメが繁殖しているようです。池の南側のブロックの上には,甲羅干しをしているカメが多数見られました。すべて,アカミミガメだと思われます。 池端に,1本の高い塔が建てられています。上には,何やら丸くて浅いザルのような物体が。この池にコウノトリが訪れるようになったので,営巣を期待して設置された人工巣塔(すとう)です。今日も,5羽のコウノトリが飛来していました。サギよりも大きくて翼の先端が黒くなっていること,嘴が長いことが特徴で,明らかにそれと分かる存在感があります。掻い掘り(かいぼり)で剥き出しになった池底をさかんに突いて,餌を捕食しています。しかし,巣塔のちょうど反対側に集まっているので,営巣はなかなか難しいようです。 コウノトリ以上に興味深いのが,池底の泥地につけられた,得体の知れない痕跡です。痕跡はあちこちにあって,直線的なものもあれば,曲がりくねったものもあります。場所的には,池の南側一帯です。 一見,巨大なムカデが這った足痕かと思いますが,そんなわけありません。では,足跡の主は,一体何なのでしょう。 アップしてみると,凹んでいる部分が帯状に伸びています。底が平たくてある程度重いものが,引き摺られたような痕です。その左右に,ほぼ等間隔に無数の穴が開けられています。巨大ムカデの足跡だとすると納得なのですが・・・ 考えられる足跡の主は,カメしかいません。ぬるぬるの泥地なので,体が少し沈みます。そのままお構いなしに進めば,凹んだ帯状の痕がつきそうです。左右の足を泥から抜き出しつつ歩けば,無数の穴もクリア! ここまで推理すれば,あとは現場をおさえるだけ! これがなかなかの至難でした。 池底が現れてしばらくすると,表面が乾いてしまって帯状の痕がつきません。足跡の穴のみです。ということで,チャンスは,池底が現れた直後。カメが甲羅干ししようと,岸に上がってくるような気候のときだけでしょう。 何度となく池に通いましたが,6回目でようやく,1頭のカメの姿と足跡がついていく様子を捉えることができました。ぬるぬるの泥の上を這うので,体が沈んでしまいます。この状態で無理矢理前進するので,帯状の跡がついていきます。そして,泥に埋もれた前足を,よっこらしょと引き抜いては前にズブリ。それにしても,こんなにもノロノロでしんどい動作を繰り返しているとは,思いもしませんでした。 このように,謎の足跡ができるためには,条件がいくつかありました。カメが多数生息している池であること。掻い掘りが実施されること。池の底が泥質で,南側の底が遠浅であること。これまで見たことがなかったということは,この条件に合致する池が,意外に少ないということかもしれません。 泥を押し除け,泥に埋まった足を数え切れないぐらい抜き差しするのは,かなり体力を消耗するでしょう。そうしてまで,乾いた場所で甲羅干しをしたがるカメの習性に,驚くやら感心させられるやらの体験でした。

基本情報

分野 分野2 育てたいもの 管理番号 季節 場所 難易度 危険度
生物 生態 探究心 911
冬
野原;
野原
難しい
普通
前のページへ戻る