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「特定外来生物」のレッテルを貼られた「オオキンケイギク」

  • 「特定外来生物」のレッテルを貼られた「オオキンケイギク」

材料

オオキンケイギク デジカメ

内容

・オオキンケイギクの生態を調べる。
・道路沿いや川辺で群生を探して観察する。
・繁殖力がとても強いことが分かる。

詳細

花瓶に挿したきれいな花,花束にしても喜ばれそうなゴージャス感があります。その名はオオキンケイギク。コスモスに似た形状で、初夏に鮮やかな黄色い花を咲かせます。元々,観賞用・緑化用に北米から導入され,広く流通していました。ところが平成18年に、特定外来生物に指定されてしまいました。その理由は,繁殖力があまりに強く、在来の野草を駆逐することが分かったからです。それ以後、栽培などが禁止されたのですが、近年、その姿があちこちで目立つようになってきています。 特に目立つのは,道路沿いや川沿いです。高速道路の緑地帯に,何百mにも渡って群生しているところがあります。これは,緑化用に植栽されたものが繁殖したのでしょうか。一般道路の道端でも,数十mの群生がポンポンと間隔を開けて,いくつも目につくところがあります。これは,風で吹き飛ばされ種子が,道端の草むらに溜まって芽を出したのだろうと推測できます。 川の両岸にも,部分的・帯状に群生が広がっているところがあります。その場所は,川面よりも高い土手の法面にあります。遊歩道などがあれば,その両脇にもオオキンケイギクが群生しています。タンポポなどのいかにも野草ではなく,誰かがわざわざ植えたのではないかと思ってしまうほど,見た目に美しい花なのですが。 大ぶりのきれいな花が,土手の斜面の一部を占有しています。少し離れて観察すると,チガヤなど在来の植物群落の中に,オオキンケイギクが入り込んでいることが分かります。このように一旦入り込むと,繁殖戦略(強い生命力,強いアロレパシーなど)によって,衰退することはなさそうです。アロレパシーとは「他感作用」と言って,他の植物の生長を抑える物質を放出したりすることです。 また,オオキンケイギクの侵入によって堤防の法面が侵食されやすい状態になることがあるそうです。 そのため,生物多様性の衰退を懸念して特定外来生物に指定されました。地域をあげて,イベント的に撲滅作戦が展開されているところもあります。大人数で,種子散布前の花が美しく咲き誇っている頃に,根から引き抜かれて廃棄されるのです。また,土壌を入れ替えてチガヤを植栽することで,オオキンケイギクの繁殖を防いだ事例もあります。 No.898のヌートリアもそうですが,人間の身勝手で導入されたものの,利用価値が無くなったり手に余ったりして,自然に放たれた命。彼らは何とか日本の環境に適応することができて,その命を繋げているのです。客観的に見れば,何とも迷惑な話です。オオキンケイギクにすれば,オオイヌノフグリやセイヨウタンポポは人間に許容されているのに,何でオレたちは〜と,文句を言いたいところでしょう。在来の野草を守るためという名目で行われる駆除は,人間の責任の取り方の一つかもしれません。ただ,繁殖力が強いがためにその対象となってしまったのは,気の毒としか言えません。 花が枯れてから,種子の様子を調べてみました。1つの花に60個以上の種子がついていました。種子数が多いだけではありません。その種子には小さな翼が付いていて,いわゆる飛ぶ種の一種であると言われています。ただ,翼といっても,風に乗って回転したり滑空したりするタイプではありません。硬めの小さな翼が種子を包み,全体として凹凸形状をなしています。そのため,風をはらみやすくなっています。熟して地面に落ちたら風に吹き飛ばされ,まき散らされるように遠くまで運ばれていくでしょう。実験してみると,広い範囲に種子が散布される様子が再現されました。それが,道路沿いに帯状に,オオキンケイギクの群生が点在している理由だと思います。 かつての人間の過ち?を無かったことにするため駆除される対象ですが,自然の底力はあなどれません。全国的にはまだ,大して認識・重視されていないようです。駆除は繁殖力に勝ることはなく,これから先オオキンケイギクは,心ならずも,ますます生息域を拡充していくことでしょう。

基本情報

分野 分野2 育てたいもの 管理番号 季節 場所 難易度 危険度
生物 植物 生態 生物愛護 900 春夏
春夏
川;野原;広場;
川 野原広場
普通
普通
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