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蜜を吸うミツバチと花の蜜標を観察しよう

  • 蜜を吸うミツバチと花の蜜標を観察しよう

材料

ヒラドツツジ

内容

・ツツジの花の蜜標とミツバチとの関係を調べる。
・蜜を吸い回るミツバチの様子を観察する。
・蜜標のある花の部分につかまって吸蜜していることが分かる。

詳細

4月中旬から5月中旬にかけて,道路沿いに美しく咲き誇るヒラドツツジ。庭木や公園樹としても植栽され,大輪の花を咲かせます。花びらは5枚あるように見えますが,基部で繋がっている合弁花です。上を向いた部分の花びらには,赤っぽい斑点状のものがたくさん見られます。これは花蜜標識(動画ではハニーガイド,正しくはネクターガイド)といって,この先に蜜があると,ハチなどの昆虫に知らせる役目を果たしているとされています。薄ピンク色の花では紅色がよく目立ち,いかにもガイドしているように見えます。しかし,赤紫や白色の花ではあまり目立ちません。 昆虫は,波長の長い赤色などを見ることができないのですが,波長の短い紫外線(UV)を見ることができます。実験として大量のモンシロチョウを放した時,赤い花にはほとんど集まらず,紫の花に多く集まったそうです。ツツジ類の蜜標部分は紫外線を吸収するので昆虫には濃く見え,蜜腺に誘導する目印になっていると考えられています。 観察してみると,蜜を吸いに来たミツバチは,一様に蜜標の付いている花びらの部分にとまって奥に潜り込み,蜜を吸っていました。最も多いポジションが,背を斜め下に向けた姿勢です。真横,また逆さ向きの個体もいました。いずれにしても,他の花の吸蜜姿勢からすると不自然なものでした。 咲いたばかりのときの雌しべは,やや下向きにまっすぐ伸びています。しかし,咲いてしばらくすると,ググッと大きく上向きに反り返ります。これは,自家受粉を防ぐためだと言われています。自分の雄しべが役目を終えた頃,ハチたちが入ってくる上向きに雌しべの柱頭をもたげることで,他の花の花粉を受粉しやすくなるのです。 横向きに咲くツツジの雄しべと雌しべのつき方を見ると,雄しべと雌しべは花の中心ではなく,下側からまとまって伸びているのです。つまり,花の下の方には空間が少なく,蜜腺に近づくには,力づくで潜り込む必要があります。しかし,上の方は空間が広く空いていて,雌しべが頭をもたげているだけです。つまり,口吻が短いハチにとって,物理的に上側からの方が蜜腺に近づきやすいのです。さらに,バラバラして足場の悪い雄しべの上に乗るより,逆さにはなりますが,蜜標のついた花びらにしがみついたほうが,安定して蜜を吸うことができます。ちなみに,口吻の長いチョウは逆さになることなく,雄しべの上にとまって蜜を吸います。 花を詳しく観察すると,蜜標の付いている花びらの元が筒状に丸まっており,その奥に蜜腺があることが分かります。また,蜜の存在を教えるかのように,細くて弱々しい雄しべが1本だけそこから伸びています。こうしてみると蜜標は特に必要ないようにも思えますが,相乗効果で,確実に受粉してもらうための自然の戦略なのかもしれません。 関連実験(あわせて、こちらもどうぞ) オドリコソウの蜜を味わおう ブラックライトで確かめよう 光(色の秘密)を探ろう

基本情報

分野 分野2 育てたいもの 管理番号 季節 場所 難易度 危険度
生物 植物 動物 探究心 820
春
広場;
広場
普通
普通
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