お寺の鐘(梵鐘:ぼんしょう),メトロノームアプリ
・お寺の釣鐘を揺らす。
・リズム(周期)に合わせて,小指1本で押し続ける
・重い釣鐘が振り子のように大きく揺れる。
No.549「釣り鐘を動かそう」 で実験した,お寺の鐘を撞く(つく)のではなく,振り子のようにユラユラ揺らすことに再挑戦してみます。その昔,源義経が牛若丸と呼ばれていた頃「お寺の大きな鐘を小指1本で動かしてみせる」と言って大人を驚かせたとか。文献には残っていないのですが,このように意外性のある話として紹介されているので,一般的には有りえないと考えられる物理的現象なのでしょう。
除夜の鐘を撞いたことのある人は,太い橦木(しゅもく:釣鐘を撞く棒)でゴ〜ンと梵鐘(ぼんしょう)を鳴らすと鐘が少しは揺れますが,ユラユラと大きく揺れないことを知っているでしょう。音がするのですから鐘自体は振動しています。しかし,振り子のように揺れることはありません。これは,慣性の法則で,静止している重量のある物体は,瞬間的に大きな力を加えても動き出しにくいからです。ですから,重い釣鐘を小指1本で揺らすことなど不可能なことだと思われるのでしょう。
そこで,まず,お寺の方の許可をいただいて,手でパンと鐘を叩いてみましょう。音がして少し揺れるだけです。次に,小指でグ〜ッと押してみましょう。意外なほど簡単に揺れます。その揺れのリズム(周期)に合わせて何度か押していると,釣鐘の揺れが大きくなってきます。揺れが目で確認できるようになったら,手前に戻ってきて向こうに揺れ出すときにグ〜ッと押します。指先を離して戻ってくるのを待ち,また向こうに揺れ出すときにグ〜ッ。これを繰り返すと,揺れがドンドン増幅していきます。
ここからが,今回の再挑戦のポイントです。鐘の揺れが止まる前に,メトロノームアプリで1往復する時間(周期)を測ります。完全に一致しない場合は,最も近い数値でOKです。そして,一旦完全に揺れを止めます。それから,アプリの音で周期のリズムを刻みながら,それに合わせて小指でグ〜ッと押します。すると,体感的に揺らすよりも,早く大きく揺らせることができます。
梵鐘を巨大な振り子と考えると,固有の振動数があります。つまり共振現象を利用することで,小さな力でも周期に合わせてタイミングよく加え続ければ,不可能だと思えた現象をこのように可能にできるのです。これは,瞬間的に大きな力を加えるよりも,間欠的に小さな力を加え続ける方が,重いものを動かすことができるという例を示しています。また,タイミングが合えば,力を無駄なく有効に使えるとも言えます。
冒頭の伝説?も,牛若丸の知恵のすばらしさ(共振現象を理解していたのかな)を紹介するために作られたお話かもしれませんね。 関連実験(あわせて、こちらもどうぞ) 釣り鐘を動かそう 共振振り子の不思議を探ろう
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