子どもの頃は、行事に用いる植物や小鳥をはじめ家畜などの餌になる植物、遊びに使う植物の名前はすぐに覚えたものです。それらの植物には、行事や遊びの理に適う、その地域特有の名前が付いていました。 例えばミズキは、葉を落とした冬の枝が赤くすべすべと美しくカギのようになっていて、これを引っかけて遊ぶので「すもうとりの木」と呼んでいました。ハコベやカタバミなどは、ニワトリや小鳥に与えるので「とりくさ」、「ひよこぐさ」と言いました。小正月に繭玉団子を挿す「イヌコリヤナギ」は「まゆだまの木」と呼びました。 たいていは、種に対応したそれぞれの呼び名がありましたが、「お盆花=お盆に飾る花」というように総称名で呼ぶこともありました。キキョウやオミナエシ、コオニユリ、オトコエシ、ヒヨドリバナなどは、いずれも野外に咲くお盆花です。栽培種のお盆花は「オイランソウ」でした。ここで紹介した植物名は、その地方だけに通用する方言名です。方言名を聞くと懐かしい情景が浮かんできます。方言名に対して日本全国に通用する名前は、正名とか標準和名と言われます。