日本人の自然観は、イメージ的には「万葉集」とか「奥の細道」などの文芸書、華道や茶道、「山水画」などの絵画、「枯山水」などの日本庭園の情景などから帰納したもののように思えます。 自然との融合や同化という言葉に置き換えられる日本人の自然観は、多くの人が学習の結果、納得して思い込んでいるように思えてなりません。日本の文化を教科書で学ぶ前の子どもたちや、自然と直接関わってそれを生業にしている農業や林業や漁業に従事している人たちは、冒頭で述べたような自然観を意識してはいないでしょう。自然を相手に暮らす日々の中で自然と付き合う知恵を身につけ、自然とどう付きあえばよいかを知っていても、彼らの自然に対する考えは、一般化した共通の「日本人の自然観」とは異なる気がします。少なくとも、ときには自然と敵対するような局面も持ち合わせていますから、彼らの自然観が「自然との融合や同化」だけということは考えられません。