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おばあちゃんのアケビ茶

おばあちゃんのアケビ茶

 私の育った土地は山間にあり、都市部と比べると1ヶ月ほど季節が遅れます。毎年6月になると祖母のアケビ茶作りが始まり、子どもの頃は、お手伝いに駆り出されました。  その年のアケビのツル(新芽)を大量に摘みます。一年分のアケビ茶の材料を摘むのです。いったい、どれほど摘んでいたのでしょう。とにかく、何日も何日もツル摘みは続きました。  アケビ茶の材料は、アケビ、ミツバアケビ、その交雑種とされるゴヨウアケビ、どれでもよいのですが、花色がエンジ色の記憶があり、おそらく、アケビかミツバアケビだったのでしょう。いずれにせよ、たくさん摘むためには装備も肝心です。といっても、ツルそのものは指で簡単に摘み取れるのですが。  祖母は、自分にも私にも、着古した浴衣を腰のところでゆるっと弛ませ、タスキでしばって着付けます。そうすると、懐からも身八口(着物の脇)からも、摘んだツルをそのまま、どんどん、取り込めるのです。  摘み取ったツルは、短くカットして大きな鉄鍋に入れ火にかけます。ときどき、手で!かき混ぜながら加熱を続けると、アケビの水分でしんなりしてきます。それを、むしろ(ワラで編んだ敷物)に広げて天日で乾燥させます。朝露の消える頃から干し始め、夕方には取り入れる、を繰り返すこと数日。それを再度、鉄鍋で煎り、からっからに乾いたものを一斗缶に保存します。  4〜5ℓのヤカンの水に一掴みの茶葉を入れ煮出して用います。それが家族5人分の1日のアケビ茶となりました。  今思えば、相当な時間と手間のかかる作業でしたが、祖母のさまざまな工夫(手製のオヤツや思いつきの茶摘み歌)のおかげで、とても、とても、楽しい時間でもありました。Ane

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