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生物学の視点での子育て8 アメリカ人が日本人になる

生物学の視点での子育て8 アメリカ人が日本人になる

 昭和30年代、国際基督教大学には多くの外国人、教職員、学生が在籍していました。そのうちの一人のアメリカ人のお話です。  彼は家族を伴って来日していましたが、あるとき彼が「息子がハイスクールに入る年齢になるので、子どもをアメリカに帰国させたい」と言いました。日本国内の学校でよいではないかと思いますが、彼の語る理由は驚くべきものでした。「日本の中学高校に入れると、息子は卒業までに日本人になってしまう」と言うのです。彼の考えは、その国の文化は青年期に身に付くものであり、青年時代を母国で過ごすことによりアメリカ人はアメリカ人足りえるということでした。アメリカ人として確立すれば、また来日させ日本の大学に通わせると続けました。彼自身、論理的な根拠は無いと思いながらも、多くの前例からそう判断したものだと語りました。  それ以来、私は、「いったい日本人とは何なのか」を考え続けています。彼の判断が正しいものだとすると、中学や高校の青年期を海外で過ごした帰国子女は日本人の心を失っているのでしょうか。根拠はともあれ、確かに感受性の強い青年時代に過ごした国の文化的な影響を受けないはずはありません。自然を含めた環境、とりわけ、付き合った友人や恩師との関わりの中で人間形成がなされることは間違いありません。

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