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生物学の視点での子育て6 小学校高学年 具体から抽象へ

生物学の視点での子育て6 小学校高学年 具体から抽象へ

 小学校低学年までの学習は具体的な事象の体験を主体とし、これに読み書き算数のような道具教科の学習を加えたものです。5〜6年生の高学年になったときに、幼少時から小学校低学年に至るまでに体験したことが学習にも活かされるのです。  体験は脳に記録されています。例えば山で涌き水を飲んだこと、水泳したこと、スキーをしたことなどの体験があると、「湧き水」「水泳」「スキー」という文字を見るだけで、その様子ばかりでなく具体的なさまざまな事柄が鮮やかに思い起こせます。脳にはミラー機能があり、文字や音や映像に触れるだけで以前の体験の記憶がよみがえり、その情景を写し出すことでイメージ化され理解できるのだそうです。つまり、体験が豊かほど多様なイメージが湧いてくることになります。私たちは、台所の蛇口からの水道の音を聴いただけでも過去のいろいろな場面が浮かんでくるはずです。また、駅で録音された鳥の鳴き声を聴いただけでもさまざまな情景を思い出します。けれども、これを想起する体験がないと水の流れる音も小鳥の声も単なる雑音に過ぎません。言い換えれば、小説を読んで感動するのも他者に対する思いやりも、その源流を辿ると自身の体験に行き着きます。体験そのものは評価の対象にならなくても、豊かな体験は多様な抽象化に欠くことのできない大切な基礎です。

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