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七草粥に半世紀

七草粥に半世紀

 1月7日は、「七草がゆの日」とされていますね。おかゆに春の七草を入れて食べますが、春の七草とは、セリ、ナズナ、ゴギョウ(ハハコグサ)、ハコベラ(ハコベ)、ホトケノザ(コオニタビラコ)、スズナ(カブ)、スズシロ(タイコン)の7種類です。  旧暦では、お正月は「新春」。新しい年を祝い、お正月気分の残る1月7日を「人日(じんじつ)の節句」と呼び、七草を食べて邪気を祓い、無病息災を祈ります。古くは、七草をあつもの(お吸い物)にして食べていましたが、やがて、おかゆ仕立てで食べる今のスタイルになりました。新年が始まると、スーパーの野菜売り場で、パック詰めの七草、あるいは、鉢植えにした七草がずらりと並びます。ただ、このようなスーパーでの風景は、割と最近のものではないかと思います。七草は、自生している野草を摘むもので、購入するようなものではなかったからです。  子どもの頃に、私が住んでいたところでは、1月6日に、七草がゆのための野草を自宅周辺で摘むのが習わしでしたが、雪深い土地でしたから、1月初旬に、すべての種類を揃えることはできません。雪に隠れた畦道をたどり、雪を足や肘で払い除け、地面に貼り付いたように自生しているセリを、小さな竹かごいっぱいに摘みました。おかゆには、このセリと各家庭で栽培しているダイコンを入れます。ですから、厳密には七草がゆでなく、ニ草がゆでした。  私は、大人になるまで、七草がゆに、5種類の野草と2種類の野菜を用いることを知りませんでした。知識を得てからは、毎年、自宅周辺の田や畦道沿いを歩いて5種類の野草を摘みました。ただ、セリ、ナズナ、ハコベラ、ホトケノザは、ふんだんにあるのですが、ゴギョウは滅多にありません。ほとんどの時間をゴギョウ探しに費やします。見つけた時は「おっ!やったぁ」と一安心。それを半世紀近く続けてきました。ところが、昨年、とんでもない事実が判明。長年、私が「ゴギョウ」と信じていたものが、なんと、ハハコグサでなくチチコグサであったのです。ハハコグサもチチコグサも、灰白色の産毛で覆われたようで、この時期は花も咲いておらず、本当に、よく似ているのです。あろうことか、友人たちにも、したり顔で毎年、七草を届けていたのですから赤っ恥。平身低頭、平謝り。…ということで、正真正銘、「七草がゆ」は今年が初めてとなりました。いやはや、チチコグサが毒草でなくて「あぁ、よかった」です。 Ane

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