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「うれしいひなまつり」サトウハチローさん。あぁ、勘違い。

「うれしいひなまつり」サトウハチローさん。あぁ、勘違い。

 3月3日は桃の節句と呼ばれ、「雛祭り」は、女の子の健やかな成長を願う伝統行事です。雛人形を飾り、白酒、菱餅、あられ、桃の花などを供えてお祝いします。その雛祭りの様子を歌にしたのが「うれしいひなまつり」。作詞はサトウハチローさん。発表されたのは1936年、当時、ラジオで放送された途端に評判になり、音楽の教科書にも掲載され大ヒットしました。  ところが、作詞者のサトウハチローさんは、後に、この曲を苦々しく思い、ご家族に、「曲の権利を買い取って捨ててしまいたい」とまで話しました。いったい、どういうことでしょう。その理由は、2番の歌詞にありました。「お内裏様とお雛様、二人並んですまし顔…」このフレーズです。内裏とは、天皇のプライベートな住まいのことです。お内裏様とは、そこに住まう高貴な方、つまり、天皇と皇后のお二人を指します。また、お雛様とは、お内裏様、三人官女、五人囃子など、すべての方々の総称です。そうすると、歌詞の辻褄が合いません。二人並んでどころか、ぞろぞろ並んで…となってしまいます。この間違いにサトウハチローさん自らが気づき、とても恥じたというわけです。  けれども、この歌にはサトウハチローさんの特別な想いが込められています。2番の歌詞は、こう続きます。「…お嫁にいらした姉様によく似た官女の白い顔」サトウハチローさんには、嫁ぐことなく若くして亡くなったお姉さんと妹がありました。つまり、この歌は、彼女たちを忍ぶ鎮魂歌なのです。  やさしくもあり、少し切なくもあり、さらに温かさもあり、80年も経った今も歌い継がれる名曲となったのは、そのことと深く関わる気がします。  サトウハチローさん、あなたの言葉選びは確かに間違いであったかもしれません。けれども、心のこもるとてもよい歌です。 Ane

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