「科学」という言葉は心理学や言語学などの分野でも使われます。「人間科学」などは、その例です。けれども、取り立てて「人間科学」「人文科学」とか「社会科学」などと言わない限り、「自然科学」を指しています。
自然科学の中で最も論理性の明確なのは数理科学でしょう。次に物理や化学ですが、私の専門としている生物学は体系的、実証的な科学の手法の導入が難しい領域を多く含んでいます。分類学にしても、現在自然分類と言われているものにさえ人為による基準が含まれています。
科学は条件と基準が前提の世界です。論文を書くときには「はじめに」として目的や過去の研究を書き、次に「材料および方法」、その次に観察や実験の「結果」を、さらに今までの研究と自分の結果についての「討論」といった、ある種の定まった形式がありました。けれども、人文科学や社会科学、人間科学にはこの自然科学の手法は適用できません。それぞれ学問体系が異なり、決まった手順や形式でまとめることができないものなのです。