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ジャコウアゲハの羽化を観察しよう

  • ジャコウアゲハの羽化を観察しよう

材料

ジャコウアゲハの蛹,冷蔵庫,白熱球,電子温度計

内容

・ジャコウアゲハの羽化の様子を観察する。
・羽化抑制によって羽化直前に調整した蛹を,白熱電球で加温する。
・任意の時間に,目の前で,羽化させることができる。

詳細

 知人から,姫路市の市蝶であるジャコウアゲハの蛹を譲り受けました。ジャコウアゲハが姫路市の市蝶になったのは,姫路城の築城主である池田輝政の家紋が「揚羽蝶」であることと,姫路城内にある「お菊井戸」の言い伝えなどが関与しているそうです。ジャコウアゲハの蛹は,後手に縛られた「播州皿屋敷のお菊さん」の姿を連想させます。さらに,口紅をつけたような赤っぽい斑点があるので,お菊さんの化身として「お菊虫」とも呼ばれています。    チョウが羽化する前に活動を抑制し,任意の時間に羽化させる方法は,モンシロチョウやアゲハなどで紹介しました。ジャコウアゲハでも,感動的な羽化シーンを子どもたちにみせるため,矢野幸夫さんが開発された羽化抑制をアレンジした方法で,任意の時間に羽化させることができました。  蛹になって1日以上経ってから,体を固定した胸部の帯糸を切り,尾部の糸をはがします。その蛹を,フタに穴を開けたプラカップなどに入れます。下には,湿らせた綿などを敷いておきます。黄色っぽかった蛹が,羽化する日には黒ずんできます。その日の夜に,一次冷蔵保存として6〜8℃の冷蔵庫に保存します。羽化準備が整った状態で,活動を停止させるためです。翌朝,室温に戻して羽化活動を再開させます。体と殻の間に隙間ができて(空隙化)乾いたような感じになり,腹節が伸びきったら羽化直前のサインなので,二次冷蔵保存します。  任意の時間に冷蔵していた蛹を取り出し,40W程の白熱球で28〜30℃で加温します。蛹は再び羽化活動を開始し,羽化する様子を観察することができます。殻から出てきたら,紙コップと割り箸で作った登り棒にとまらせます。  ストローの口である口吻は,最初は2つに分かれています。それを,巻いたり伸ばしたりしながら,1つに組み合わせていきます。その終盤に,液を出します。オオムラサキでも見受けられたのですが,この液は,接着剤のような働きをするのではないかと考えています。膨らんだ腹部を大きく蠕動させ,縮れたような翅に体液を送り込んで伸展させていきます。1時間ほどすると,体内の余分なものを排泄し,飛び立つことができるようになります。  羽化の成功を願いつつ観察を続けてきた子どもたちに,最後の別れをさせてあげましょう。自分の手で自然に帰してあげたという経験も,忘れられない感動体験に花を添えることでしょう。  ジャコウアゲハは,毒素を含むウマノスズクサが食草です。葉を食べることで体内に毒素を取り込むので,幼虫も成虫も,鳥などに捕食されにくいそうです。腹部の派手な赤と黒の模様は,警告色でしょう。クロアゲハなどは,ジャコウアゲハに擬態しているのではないかと言われています。

基本情報

分野 分野2 育てたいもの 管理番号 季節 場所 難易度 危険度
生物 動物 生態  生命尊重 850 春夏
春夏
室内;
室内
難しい
普通
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