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鏡に映る像は実像?虚像?

鏡に映る像は実像?虚像?

 虚像という言葉は、例えば「歴史の虚像」などという場合に使われ、実際とは異なる作られたイメージ、真実ではないものを象徴する言葉です。けれども、もともとは光学用語で、鏡やレンズなどで発散した光を逆向きの方向に辿って見える像を指す言葉です。

 虚像と言うと、多くの人は中学校の教科書に描かれた凸レンズとローソクの図を思い浮かべるでしょう。教科書には中央に凸レンズ、その左右に焦点の位置が記されていて、向かって左側に火のついたろうそく、右側に炎の部分が下向きになった図が描かれていたはずです。そして、右側の倒立像が実像であると記されていたでしょう。焦点の内側に物を置き反対側の右側からのぞくと大きな像が見え、これが虚像だと説明されています。点線でこの大きな虚像を補足して描いてある教科書もあります。また、「実像は光が集まってできますが、虚像は光が集まってできた像ではありません。虚像のあるところから光がやってくるように見えているだけです」といった解説が付け加えられています。ですから、この説明を覚えれば試験は満点です。ところが、実は、それはしっかり理解しているとは言えないのです。分かりやすく説明すると、虚像は人間の眼の網膜で見ている像で、光をそこから出しているわけではありません。虹も同様です。虹の見えるところに光が集まっているわけではなく、網膜で感知しているだけなのです。つまり、虹という本体は無いのです。もっとも、人間の網膜で捉えることのできる虚像は写真でも写すことができますから、カメラで撮れば美しい虹を確かめることができます。

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