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ふるさと  帰れる魂を育む

ふるさと  帰れる魂を育む

 私にとって、ふるさとは長い時間を経過した懐かしいもので生家や遊び友だちのイメージです。生家の木戸にはシナノマメガキがありました。魚を捕る網や蚕の網を浸す柿渋用に植えられたものでしたが、熟すと甘くなり恰好のおやつでした。冬の西風を防ぐ植垣のイチイの赤い実、庭のリンゴや梨、裏山の栗など、鮮やかな記憶として今も私の心の内にあります。それと共に、触・嗅・味を伴った子どもの頃の体験は、いつまでたっても消えることはありません。これからのこども達にも、いつまでも彼らの心に残る情景や、それを裏打ちする食臭味を伴った体験を幼児期に与えたいものです。それらの思い出は、大きくなっても彼らの心を瞬時に懐かしいふるさとの地に立たせます。そして、いつまでも彼らを支える「ふるさとに帰れる魂」を育むのです。

 「ふるさとに帰れる魂」という言葉は国際基督教大学のドイツ語の教授であった小塩節氏の言葉です。氏はトーマス・マンの「魔の山」「ジャン・クリストフ」「チボー家の人々」などを例に、荒涼たる人間にならないためには“魂のふるさと”を持つことが大切であると話しました。


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