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なぜなぜ感覚

なぜなぜ感覚

 私の小学生時代の恩師「本川光雄先生」は、当時では珍しい理科専科の先生で初等理科教育の世界では並外れて有名な先生でした。私自身が教員になって気づいたのですが、小学6年生の時に私が受けた先生の授業は、とんでもなくすぐれた理科の授業でした。また、先生は子どもが興味や関心を示す好機を逃がさず、子どもが自らの力で知識を得るまで、次の関心につなげるまでじっくり付き合うことのできる優れた指導者です。先生の私への関わりをお伝えすることで、何かを感じ取ってもらえれば嬉しい限りです。  「なぜなぜ感覚」  ある日の理科の授業は、鉄くぎを塩酸に入れる実験を含むものでした。イオン化傾向を学んでいない小学生の私に、鉄くぎがどうして溶けるのか理由が分かるはずはありません。でも、どうしてもその答えが知りたくて先生に質問したのです。すると、「君ならいつか分かるよ」と先生は笑って答えられました。「いつかっていつだ?」とそのときは生意気にも思い、何だかはぐらかされたような気がしたことを覚えています。ところが、中学3年にイオンの勉強をしたときに、その理由が明確に理解でき、まさにひざを打つように納得できました。本川先生の「いつか分かるよ」という答えは間違いではありませんでした。中学生の私は、提出レポートに「どうして鉄くぎが溶けたかやっとわかりました」と、喜びを持って書くことができたのです。私の感動や喜びが指導された中学の先生にも伝わったのでしょう。私のレポートを見て、「君は小学校のときにとても良い先生に理科を教わったんだね」と言われました。改めて、本川先生に教えられた幸運に思いが及びますが、それとともに、どうして本川先生の授業は、こんなにも「なぜなぜ感覚」を持続させられるのか不思議でたまりません。ogata

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