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耐水害住宅「UKISU」 オーナーは賢いカイツブリ

耐水害住宅「UKISU」 オーナーは賢いカイツブリ

 散歩の途中、近所の溜池を通りかかると、聞き逃してしまうほどかすかな水音。音を頼りに、目を凝らしてみると、水面に茶色の枯れ草。さらに、よく見ると小さな白いものが枯れ草の隙間からチラリと見える。卵?もしかして「カイツブリ」の卵?とテンションがあがるけれども、それは岸から少し離れた所にあり、おまけに夕暮れで、しっかり確認ができません。裾をめくって池に入ろうかとも考えましたが、迷った末、長靴持参で出直すことに。  翌朝、同じ場所にワクワクした気分で到着。今回は車です。これが幸いしたようで、抱卵中のカイツブリの親鳥が、ドアの開け閉めの音に驚いて、瞬時に水中に姿を消しました。残された巣には、なんと、卵が5個!長靴を履いて近づくまでもありません。その様子が、つぶさに見えます。巣の周りの植物はマコモでしょうか、全てぐるりと放射状に横倒しになっています。その中心にある巣は、マコモの枯葉が円を描くように敷き詰められています。マコモは水に浸って焦茶色に変色し、その上に卵が載っているのです。生まれたばかりの卵は真っ白ですが、今の卵は薄いベージュに濃いシミのような模様まであります。おそらく、濡れた枯葉で着色されているのでしょうね。  ところで、カイツブリの浮巣(うきす)は、マコモやガマ、アシなどの水辺の植物を柱にして、その柱に編み込むように巣を作ります。巣は、ざっくりとした球体で、そのほとんどが水面下にあります。水面に見える産座は50cm〜60cm程度が一般的です。今回見かけた産座も50cm程度の大きさ。もちろん水面下の様子は分かりませんから、まるで、円盤状の巣が水面に浮いているように見えます。 抱卵中の様子を撮影したくて、しばらく待ってみましたが、一向に親鳥が戻る様子がないので断念し、長靴を履き替える、ほんのわずかな時間に、親鳥が現れたかと思うと、クチバシで枯葉をかき集めるように被せて卵を隠してしまいました。熟練のベッドメーキング。見事な早技。私は片足だけの長靴姿で呆然と見惚れていました。  後日、5個の卵はどういったアクシデントか、2個に減り、さらに、孵化したヒナは一羽のみ。親鳥は、マダラ模様の小さなヒナを背中に背負って育児を開始した模様です。 ❇︎家が水没するような災害に見舞われたとき、あえて、家を浮かせるという大胆な発想で被害を抑える「水に浮く家」を、近年、ある大手住宅メーカーが開発しました。これって…カイツブリに特許料…住宅の名称を「UKISU」とは言いませんよね?残念!

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