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樟脳船が進む仕組みを考え直そう

  • 樟脳船が進む仕組みを考え直そう

材料

針金樟脳アメンボ 樟脳船 チョーク カッター エタノール スポイト トレーや洗面器

内容

・樟脳船が進む仕組みが,表面張力に起因するかどうか再考する。
・チョークの粉で覆われた水面で樟脳船を動かして,様子を観察する。
・樟脳船は,表面張力の差よりも,作用反作用によって動くのではないかと考えられる。

詳細

針金アメンボに樟脳をセットして動かすために試行錯誤していた中で,気づいたことがあります。樟脳船の推進力は,船首と船尾の表面張力の差だと言われてきました。船尾の樟脳が昇化して分子が水面に幕状に拡散していくと,その部分の表面張力が小さくなります。すると,相対的に船首の方の表面張力が大きくなって前の方に船を引っ張るので,船が前進するという考え方です。 しかし,針金樟脳アメンボが動く際,前足の開口部の向きによって,進む方向が決まることがわかりました。その様子は,どう見ても前に引っ張られているようには見えません。どうも,昇華した分子が後方に勢い良く押し出され,その反動でアメンボが前に進むように思われました。 そこで,針金アメンボを浮かべた水面に,胡椒を満遍なく撒き散らしました。樟脳分子が開口部から噴出される様子を観察するためです。そして,前足に樟脳をセットしました。ところが,アメンボは微動だにしません。良く見ると胡椒の粉は意外に大きく,しかも少し水を弾いています。そのため,互いに影響し合って身動きできない状態にあるようです。次に,もっと軽くて浮く粉として,チョークをカッターの刃で削って粉状にし,水面を覆ってみました。先に浮かべておいた針金アメンボに樟脳をセットすると,ゆるゆると動きます。予想どおり開口部からは,ずっと後ろの方まで軌跡を残しながら,分子が勢い良く噴出されている様子が見て取れました。この様子は,ライトを当てた透明容器の底から見ると,より明らかとなります。また,チョークの粉が押し広げられた面積が,どんどん増えていくことはありませんでした。 チョークを撒いた水面に洗剤を1滴垂らします。すると,浮かべていた針金アメンボは沈み,チョークの粉は端に押し付けられました。そこに樟脳船を浮かべようとしましたが,船も沈んでしまいました。もし,船の後部にセットした樟脳で表面張力が弱まるとすると,そこから船は沈んでいくのではないでしょうか。また,コップに水を張り,表面張力で水面が盛り上がる状態にしておきました。そこに船を浮かべ,後部に樟脳をセットしても,表面張力が弱まって水がこぼれることはありませんでした。さらに樟脳のかけらを加えても,水面には何の変化も起きませんでした。 結果的に,針金樟脳アメンボおよび樟脳船は,通説の表面張力ではなく,作用反作用で動くと考えた方が妥当だと思われます。さらに,噴出された樟脳はどんどん昇華していくので,水面全体が樟脳分子ですぐに覆われることがないため,比較的長く動き続けるのだと考えられます。

基本情報

分野 分野2 育てたいもの 管理番号 季節 場所 難易度 危険度
化学 物理 物質の状態 運動 探求心 830 春夏秋
春夏秋
室内;
室内
普通
普通
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