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狙い撃ち。ミイデラゴミムシはスナイパー!

狙い撃ち。ミイデラゴミムシはスナイパー!

 「ミイデラゴミムシ」、妙な呼び名である。寺社めぐりが好きな人なら、「ミイデラ」は、滋賀県大津市の三井寺を連想する。そんな、ありがたそうな前半に続いて「ゴミムシ」…上げたり下げたり、どっちなんだ。 ミイデラゴミムシは、俗にへっぴり虫とも呼ばれる。刺激を受けると、まるで、オナラのようなガスをプッとかポンとかの音と共に噴射するからだ。三井寺に保存されているユーモラスな鳥羽絵の巻物に「放屁合戦」が描かれている。どうやら、このことに「ミイデラ」の呼び名が関係するらしい。しかし、「ゴミムシ」の呼び名は納得がいかない。ゴミムシの仲間は後翅が退化して飛べないので、ゴミでも漁るイメージなのかもしれないが、ほんとは、ミイデラゴミムシの幼虫は「ケラ」の卵しか食べないグルメな虫である。  ところで、へっぴり虫の俗名を拝したオナラは、実は、厳密にはオナラではない。出口は肛門ではなく、腹部の末端。ミイデラゴミムシは、過酸化水素とヒドロキノンをそれぞれ別に収納する部屋を持つ。外敵からの攻撃を受けると、瞬時に、各部屋のバルブを開き、別の小部屋に送り込み、さらに、反応を促す酵素を加える。すると、生成されたベンゾキノンと高温の水蒸気が破裂音と共に、一気に噴射されるしくみだ。なんと、この時の温度は100度以上。火傷するって!さらに、不快な臭いも伴うからたまらない。その上、狙う方向も自在、おまけに連射もできる。ミイデラゴミムシは、すぐれたスナイパーなのだ。  ヒトにはそれほど被害は無いが(目に入ると危険)、皮膚につくと茶色いシミが点々とつく。このシミは、洗ってもなかなか落ちない(4〜5日、長ければ2週間ほどで消える)。ベンゾキノンがタンパク質と反応し変色するからだ。  なんと?!ミイデラゴミムシのオナラを試してみたい?では、くれぐれもご用心。火傷はしないが、思わず、熱っ!となるからな。 Ane

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