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拿捕(だほ)  海上での事件でだけ使う言葉

拿捕(だほ)  海上での事件でだけ使う言葉

「日本漁船が根室沖で拿捕」。このような場合に用いる拿捕という言葉は、いったいどういう意味でしょう。

 拿捕の「拿」は俗字で、正字は手の上は合でなく奴です。また、この字は漢和辞典にしか掲載されていません。文字の持つ意味は「捕らえる」「引っ張る」「つかみ合う」といったものです。拿捕という言葉の意味には、「人や動物を力ずくで捕える」という記述もありますが、実際には、動物を捕える場合にこの言葉を使うことはありません。現在の用法は、すべて海上での事件にのみ用いられます。由来を調べてみますと、“領海を侵犯した船舶や国籍不明の不審の船舶を一時的に捕え連行し調べ、戦時国際法に違反するものを積載している場合には、これを没収することができる”という戦時国際法から来ていているようです。英語では「capture」の単語が使われています。現在もこれに類した国際法があり、区域外での操業は禁止され協定に基づいて違反の事実の審議がなされます。このような難しい言葉を使うことには賛否両論があると思いますが、漢字仮名交じりの日本語は、文字の持つ意味だけでなく、その背景にも味わいがあるものです。

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