ヤナギ虫と呼ばれたカミキリムシの幼虫は炭火の上に置くと、伸びてプシューという音と共に内部の水蒸気の膨圧で外側が破れます。やがてこんがりきつね色に焼き上がると、とても香ばしい匂いがし甘味のある上等な味がしました。
そう言えば、トンボの胸部も焼いて食べていました。また、オオカマキリの卵塊はそのまま噛むと旨みのある黄色い汁が出てくるのですが、チューインガムを口にするように汁だけ吸う味わい方でした。こういう食文化は、信州ほど特別なものでなくても、各地に似たような形でありました。貴重なたんぱく質原として、あるいは、子どもたちのオヤツ代わりに、また、食べること以外に、そこに行き着くまでの工夫や努力には、それに倍する楽しみがありました。野外での小動物との関わりが希薄化し、こうした動物食文化の多様性も消えていく運命にあります。知恵を働かせ自らが食べ物を手に入れる豊かな遊びはとても有用なものなのです。