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トビがタカを生む  始原生殖細胞の可能性

トビがタカを生む  始原生殖細胞の可能性

 この言葉は平凡な親から非凡な子が生まれたような場合のたとえとして使われます。宮廷や武家に長く伝わった狩猟法に鷹狩りがありました。そのために、タカはトビよりずっと有用な鳥と位置づけられたのでしょう。

 現実にはトビがタカを生むなど考えられないことでしたが、最近の生物工学の手法では、トビにタカを生ませることが可能になりつつあります。鶏にはたくさんの品種がありますが、白色レグホンの卵から天然記念物に指定されている尾長鶏を生ませることに成功した例や、チャボに雷鳥を生ませる研究も国立環境研で進められています。鳥類の初期胚の一時期に将来精子や卵子をつくる「始原生殖細胞」が血管中を移動する現象を利用した生物工学です。チャボと雷鳥の受精卵の発生の時期を合わせ、雷鳥の初期胚から採取した始原細胞入りの血液をチャボの胚の血管中に注入すると、チャボと雷鳥の両方の生殖細胞を持ったチャボの雛になります。たくさん育てた雌雄の交配による受精卵の中に、確率は低いが雷鳥の遺伝子だけを持った雛が生じてくるというのです。これはDNAの検査でも証明済みですから、トビがタカを生む日も夢ではないようです。

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