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日本人の自然観1  人も神も自然と一体

日本人の自然観1  人も神も自然と一体

 日本人の自然観と言っても、簡単にまとめてしまえるものではありません。

 ここでは日本最古の歌集「万葉集」にスポットを当ててみたいと思います。万葉集の作者は乞食から庶民、豪族、貴族、天皇まで幅広い層に及ぶものですから、それらを読み解けば、日本人の自然観の一つを示すことができるでしょう。歌集には山川草木、花鳥風月など具体的な多くの自然の事象が採り上げられていますが、自然そのものに相当する総称名は見あたりません。自然という言葉は大和言葉にはないからです。自然という言葉が中国から伝えられた当初は、「じねん」と言われていました。

 万葉集に見られる日本人の自然観は、人も神も自然と一体と捉える同化思想だと言えます。神に畏敬の念を持つのと同様に、天変地異などの自然の驚異も自らの力の及ばないものとして恐れたのです。欧米のキリスト教などに代表される自然観は、人も自然もすべて神の創造物というものです。表層の畏敬や恐れなどの感情は似ていますが、その観点に本質的な違いがあります。

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